パソコンとモニターをつなぐとき、よく見かける「HDMI」や「DisplayPort(ディスプレイポート)」という名前。HDMIは聞いたことがあっても、「DisplayPortって何?」と思う人も多いのではないでしょうか。
実はこのDisplayPort、パソコンやゲーミングモニターで映像の画質や動きをよりなめらかに表示したいときにとても重要な存在です。
特に高リフレッシュレートやマルチモニター環境で使うなら、HDMIよりもDisplayPortの方が優れていることも。
この記事では、DisplayPortとは何か、HDMIとの違い、バージョンごとの特徴、注意点、さらにはケーブルの選び方までをやさしく解説します。
DisplayPortとは?バージョン毎の性能差はどれくらい?

DisplayPort(ディスプレイポート・DP)は、主にPCやゲーミング向けに開発された映像出力インターフェースで、2006年にVESA(Video Electronics Standards Association)によって策定されました。
DisplayPortはバージョンごとに機能強化が行われており、用途に応じて最適な規格を選ぶことができます。
DisplayPortのバージョン毎の性能早見表
| バージョン | 最大解像度 | 最大リフレッシュレート | 特徴 |
|---|---|---|---|
| DisplayPort 1.2 | 4K/60Hz | フルHD:240Hz WQHD:165Hz | 旧世代だが十分な性能。普及率が高い。 |
| DisplayPort 1.4 | 4K/144Hz | フルHD:360Hz WQHD:240Hz | DSC対応。現行主力規格。多くのハイエンドモニターで採用されている。 |
| DisplayPort 2.0 | 8K/60Hz | フルHD:500Hz以上 WQHD:480Hz 4K:240Hz | 次世代規格。HDR対応。2024〜25年以降に製品が本格化。 |
| DisplayPort 2.1 | 8K/60Hz | フルHD:500Hz以上 WQHD:480Hz 4K:240Hz | DP2.0のマイナーアップ版。ケーブル規格の明確化と安定性が向上し、互換性が強化された。 |
DisplayPort1.4以降では、DSC(Display Stream Compression)による映像の可逆圧縮が可能となり、伝送帯域を抑えながら高リフレッシュレート・高解像度を両立できます。
今後はDisplayPort2.0の普及により、4K/240Hzや8Kなどさらなる高次元の映像体験が可能になると期待されています。
DisplayPortの特徴

- ライセンスフリーでの導入が可能
- DisplayPortはVESA(Video Electronics Standards Association)という非営利団体によって策定されたオープンな規格であり、HDMIのように利用に対してライセンス料が発生しません。
- 広帯域幅で高解像度/高リフレッシュレートを実現
- HDMIよりも伝送できるデータ量が多く、より高解像度で高リフレッシュレートな映像出力が可能になります。
- マルチモニターやデイジーチェーン接続に対応(MST機能)
- DisplayPortはMST(マルチストリームトランスポート)機能に対応しており、対応モニター同士をDisplayPortケーブルやUSB-CケーブルでつなぐことによりPC側からは1本のDisplayPortケーブルのみでマルチモニター環境を構築できます。ケーブルが乱雑にならないため、デスク周りがスッキリします。
- NVIDIA G-SYNCやAMD FreeSyncといったVRR機能に対応
- VRR(可変リフレッシュレート機能)に対応し、ゲーム中のカクつきやティアリング(画面のズレ)を抑えて、より滑らかな映像体験を実現します。
- 長距離伝送に強い
- DisplayPortはノイズ耐性と信号劣化の少なさから、HDMIよりも長い距離でも安定した映像伝送が可能。プロジェクターや業務用ディスプレイへの接続にも適しています。
HDMIがあるのになぜDisplayPortが誕生したのか?

DisplayPortってHDMIと用途がほぼ同じです。形状も似ています。どちらも同じ映像出力インターフェースです。
なぜすでにHDMIという規格があるにも関わらず、DisplayPortが生まれたのでしょうか?
HDMIは2000年代初頭に家庭用のテレビやAV機器向けに登場し、家電機器に最適化された仕様(例:リモコン制御(CEC)や著作権保護(HDCP))を備えています。
しかし、PCや業務用途に求められる高解像度・高リフレッシュレート・長距離伝送・複数モニター出力などの要件には十分に応えられませんでした。
このギャップを埋めるために、2006年にVESAが開発したのがDisplayPortです。
つまりDisplayPortは、PCやゲーミング用途に必要な技術要件を満たすために独自進化を遂げた映像規格であり、家庭用AV用途のHDMIとは目的と背景が異なるのです。
DisplayPortとHDMIの性能比較
| 比較項目 | DisplayPort | HDMI |
|---|---|---|
| 最大解像度・リフレッシュレート | 最大8K/60Hz(ver. 2.0)・4K/240Hz | 最大4K/120Hz(ver. 2.1) |
| 可変リフレッシュレート(VRR) | G-SYNC・FreeSyncとの相性良好 | HDMI 2.1で一部対応 |
| デイジーチェーン接続 | 対応(MST機能) | 非対応 |
| 音声出力 | 対応 | 対応 |
| ケーブル長 | 約3m以上でも安定伝送可能 | 1.5〜2mが限界(高帯域時) |
DisplayPortはゲーミングPC環境において非常に優れた互換性と性能を誇り、複数モニターの直列接続・数珠つなぎ接続(デイジーチェーン)にも対応。プロゲーマーや配信者にも好まれる接続方式となっています。
現在では基本的に「HDMIはゲーム器や家庭用テレビ・AV機器向け」、「DisplayPortはPC(業務用・ゲーミング用)向け」という棲み分けがなされています。
USB-Cの「DP Alt mode」とは?

DP Alt Mode(DisplayPort Alternate Mode)とは、USB-C端子を使ってDisplayPortの映像信号を出力するための機能です。通常、USB-C端子はデータ通信や充電に使われますが、DP Alt Modeに対応していれば、USB-Cポート1つでモニターへの映像出力も可能になります。
この機能があれば、ノートパソコンやタブレットからUSB-Cケーブル1本で、モニターへの映像出力・給電・データ転送をまとめて行えるようになります。特に最近のドッキングステーションや薄型ノートPCでは、この機能に対応している製品が増えています。
ただし、すべてのUSB-C端子がDP Alt Modeに対応しているわけではありません。外見だけでは見分けがつかないため、購入前に「DP Alt Mode対応」や「DisplayPort over USB-C」といった記載があるかを必ず確認してください。また、モニター側もUSB-C映像入力に対応している必要があります。
DisplayPortケーブル選びの注意点
- 高帯域に対応したケーブル選びが重要
- DisplayPortの性能を最大限に引き出すには、VESA認証済みの高品質なケーブルの使用が強く推奨されます。特に4K/144Hzや4K/240Hzといった高解像度・高リフレッシュレートの出力時には、安価なケーブルでは映像のちらつき・ノイズ・信号切断などが発生する恐れがあります。
- ケーブル長とノイズ耐性にも注意
- DisplayPortは比較的長距離伝送に強いものの、3mを超える場合はアクティブケーブル(信号を増幅する仕組み付き)を選ぶことで安定性が向上します。ノイズの多い環境ではフェライトコア付きケーブルが有効です。
- 端子形状の違いに注意
- DisplayPortにはフルサイズとMini DisplayPortがあり、ノートPCや一部のモバイル機器ではMini端子が搭載されています。また、USB-C端子でDisplayPort信号を出力する「DP Alt Mode」対応機器もありますが、すべてのUSB-Cが対応しているわけではありません。使用前に仕様を確認しましょう。
- DP Alt modeとの混同に注意
- USB-C端子にDisplayPort出力機能が備わっているかどうかはデバイスに依存します。特にスマートフォンや一部のノートPCでは、充電専用またはデータ通信用のUSB-C端子も存在するため、映像出力対応かどうかを必ず確認してください。
おすすめのDisplayPortケーブル
DisplayPort1.4
柔軟性と耐久性を兼ね備えたDP1.4のDisplayPortケーブルです。取り回しが良く、品質も高い定番のケーブルです。
日本製にこだわりたいならこちらのケーブルがおすすめです。
DisplayPort2.1
最新規格のDP2.1のDisplayPortケーブル。多層シールドによりノイズ耐性が高いです。DisplayPortは下位互換性があるため、DP2.1ならあらゆるDisplayPort端子搭載のモニターで使用できる。
モニター選びでDisplayPortの仕様を確認するチェックリスト
DisplayPort搭載モニターを選ぶ際は、単に「DisplayPort対応」と書かれているだけではなく、次の2点に特に注目しましょう。
- DisplayPortのバージョン表記
- 1.2、1.4、2.0など、バージョンによって対応できる解像度やリフレッシュレートが異なります。たとえば、4K/144Hzを目指すならDP1.4以上が必要です。
- DSC(Display Stream Compression)への対応
- DP1.4で4K/144Hzを実現するには、DSCに対応している必要があります。仕様書でDSCの記載があるか確認しましょう。
DisplayPortに関するよくある質問(FAQ)
- QDisplayPortをテレビに使えますか?
- A
一部のテレビでは使用できますが、HDMI端子しかない製品が多いため、DP→HDMI変換アダプターが必要になるケースがほとんどです。
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ポチップ
- QDisplayPortの弱点やデメリットはありますか?
- A
家庭用テレビやゲーム機との互換性が低く、それらを使う多くの場面ではHDMIが必要になります。また、USB-Cの「DP Alt Mode」に関しては対応しているかどうかが機器によって異なるため、接続には事前の確認が必要です。
- QDisplayPort対応モニターでHDMIしか使っていないのは損ですか?
- A
もったいない可能性があります。DisplayPortの方が高リフレッシュレートや「G-SYNC・FreeSync(可変リフレッシュレート)」に対応しやすいため、より高性能な環境でゲームを遊んだり作業が行える可能性があります。
- QDisplayPortの端子は壊れやすいですか?
- A
特別に壊れやすいわけではありませんが、ロック付き端子の場合、無理に引き抜こうとすると破損することがあります。取り外すときはボタンを押してから抜きましょう。
- QDisplayPortのロック機構って何?
- A
一部のDPケーブルには抜け防止の「ロック機構」があります。外すときはロックボタンを押しながら引き抜く必要があります。
- QPS5やSwitchではDisplayPortが使えないの?
- A
はい、これらのゲーム機はHDMI専用の出力端子しか持っていないため、DisplayPortは使えません。DisplayPortは基本的にPC用として選ぶインターフェースです。
- QDisplayPortケーブルはどこで買うのがおすすめですか?
- A
Amazonや楽天、家電量販店、家電量販店のオンラインショップなどで手に入ります。基本的にどこで買っても問題ありません。重要なのは使用モニターの備えているのと同じバージョンのものを選ぶこととノイズ耐性(ケーブルの長さにもよる)の強力なものを選ぶとよいでしょう。
- QDisplayPortは音声も出せますか?
- A
はい、映像と一緒に音声も送ることができます。HDMIと同じようにスピーカー付きのモニターなどで音を出すことができます。
- QノートパソコンでもDisplayPortは使える?
- A
多くのノートパソコンがMini DisplayPortやUSB-C経由でDisplayPortの映像出力に対応しています。
- QDisplayPortは今後も使われ続けますか?
- A
はい。8Kや240Hzといった将来の高画質ニーズにも対応できるため、今後もPC市場では主要な映像出力規格として使われ続ける見込みです。
まとめ
DisplayPortは、PC環境において高解像度・高リフレッシュレート・VRR・マルチモニター対応といった、多くの映像ニーズに応えるために登場した映像出力インターフェースです。HDMIでは難しい性能や機能の領域をカバーすることができます。
PCでのゲームやクリエイティブ作業、業務用途まで幅広く活躍します。
DisplayPortを最大限活用するには、モニターやケーブルのバージョン(例:DP1.4やDP2.0)やDSC対応の有無を確認することが重要です。また、VESA認証済みの高品質ケーブルを使うことで、安定した映像体験を得られます。
HDMIとの使い分けを意識し、ゲーム機やテレビにはHDMI、PCにはDisplayPortと用途に応じた接続方法を選ぶとよいでしょう。
さらに、8Kや240Hzといった次世代映像にも対応できるDisplayPortは、長期的に見ても安心して選べる規格です。



