Advanced HDR by Technicolorとは?SL‑HDRの仕組みと普及しない理由

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夕焼けの山と湖の風景の中央にAdvanced HDR by Technicolorの文字が配置されている

Advanced HDR by Technicolorは、TechnicolorとPhilipsが共同開発したHDR規格です。

HDR10やDolby Visionほど有名ではありませんが、SDRとの互換性を重視して設計された独自のHDR方式として知られています。

この記事では、Advanced HDR by Technicolorの仕組みやSL‑HDR1 / SL‑HDR2 / SL‑HDR3の違い、そして現在あまり普及していない理由をわかりやすく解説します。

Advanced HDR by Technicolorとは

Advanced HDR by Technicolorは、TechnicolorとPhilipsが開発したHDR技術です。

この技術の最大の特徴は、SDRとの互換性を前提に設計されている点にあります。

一般的なHDR方式ではHDR専用の映像信号を送る必要がありますが、Advanced HDR by TechnicolorではSDR映像に追加情報を付加することでHDR表示を実現します。

この仕組みによって、HDR対応ディスプレイではHDR映像として表示され、HDR非対応ディスプレイでは通常のSDR映像として再生されます

つまり、同じ映像信号でSDR機器とHDR機器の両方に対応できる設計になっています。

SL‑HDRとは

Advanced HDR by Technicolorでは、SL‑HDR(Single Layer HDR)と呼ばれる方式が使われています。

SL‑HDRは、SDR映像をベースにHDR情報を付加することでHDR表現を実現する仕組みです。

従来のHDR方式ではHDR用の映像信号を別に送る必要がありますが、SL‑HDRではSDR映像とメタデータを組み合わせてHDRを再構築します。

この方式により、HDR対応機器ではHDRとして表示され、非対応機器では通常のSDR映像として表示されます。

放送分野では、既存のSDRテレビとの互換性を維持できるため、このような方式が重要視されています。

SL‑HDR1 / SL‑HDR2 / SL‑HDR3の違い

Advanced HDR by Technicolorには、用途の異なる3つのHDR方式が存在します。

SL‑HDR1

SL‑HDR1は、SDR映像をベースにHDR映像を再構築する方式です。

放送用途を想定して設計されており、既存のSDR映像信号にHDR情報を付加することでHDR表示を実現します。

SL‑HDR2

SL‑HDR2は、HDR映像の品質を高めることを目的とした方式です。

主に映像制作やポストプロダクションなど、コンテンツ制作側での利用を想定しています。

SL‑HDR3

SL‑HDR3は、HDR10を拡張する形でHDR表現を改善する方式です。

動的メタデータを使用することで、シーンごとに最適な明るさや色の調整を行うことができます。

SDR互換性を重視したHDR

Advanced HDR by Technicolorの大きな特徴は、SDRとの高い互換性です。

SL‑HDR方式ではSDR映像をベースにしているため、HDR非対応のテレビでもそのまま映像を表示できます

これは放送業界にとって重要なポイントで、HDRテレビと従来のSDRテレビを同時にカバーすることができます。

そのため、この規格は主に放送用途を想定して設計されています

なぜほとんど普及していないのか

Advanced HDR by Technicolorは技術的にはよく考えられたHDR方式ですが、実際の普及はかなり限定的です。これは単に知名度が低いというだけではなく、いくつかの市場的な理由があります。

まず大きいのは、すでにHDR10やDolby VisionなどのHDR規格が広く普及していたことです。HDR10は業界標準として多くの機器が対応しており、Dolby Visionは映画や配信サービスで強い存在感を持っています。こうした規格が主流になったことで、新しいHDR方式が入り込む余地があまりありませんでした。

次に、Advanced HDR by Technicolorが強みとしていた「SDR互換HDR」の需要が想定よりも小さかった点があります。SL‑HDRはSDR映像に追加情報を付けることでHDR表示を実現する仕組みですが、テレビのHDR対応は予想より早く普及しました。その結果、配信サービスや映像制作では最初からHDR専用の映像を配信するケースが増え、SDR互換方式のメリットが活かされにくくなりました。

さらに、テレビの映像処理チップ(SoC)の対応状況も影響しています。Dolby Visionなどは多くのチップで標準的に対応していますが、Technicolor HDRは対応チップが少なく、メーカーが実装するメリットが小さい状況でした。こうした事情もあり、テレビやモニターへの採用はあまり広がりませんでした。

そしてもう一つ大きいのが、放送向けHDRとしてHLGが事実上の標準になったことです。HLGはNHKとBBCが開発したHDR方式で、放送用途に最適化されています。Technicolor HDRも放送分野を想定していましたが、結果としてこの分野ではHLGが広く採用される形になりました。

こうした複数の要因が重なり、Advanced HDR by Technicolorは技術的には存在しているものの、実際の映像機器や配信サービスではあまり使われないHDR規格となっています。

まとめ

Advanced HDR by Technicolorは、SDR映像をベースにHDR情報を付加する「SL‑HDR」方式を採用したHDR規格です。

SDRとの互換性を重視した設計により、HDR対応機器とSDR機器の両方で映像を再生できる点が特徴です。

ただし現在のHDR市場では、HDR10、Dolby Vision、HLGなどの規格が広く普及しており、Advanced HDR by Technicolorが採用される場面は限られています。

そのため、日本のテレビやモニターでこの規格を目にする機会はあまり多くありません。